9月下旬、リチャード・カーティス脚本・監督の映画”About time” が、世界から一年遅れての大公開という
おそるべき快挙をなしとげたので、(もう日本未公開だと思ってたよ)、英国展はとっくにに終わっていますが
記念に?私も英国映画の中途半端な話を続けております。今回はおすすめのブラック・コメディ。
“About time” は「アバウト・タイム 愛おしい時間について」という、ちっとも愛おしくない邦題がついているのですが、
このセンスでいくと”Keeping mum” は「キーピング・マム 家政婦さんはママだった!?」でどうでしょう。
幸か不幸か、豪華キャストぞろいなのにこの映画は日本未公開。タイトルは「母を雇う」と「口を閉ざす(秘密にする)」のダブル・ミーニング。
亡きパトリック・スウェイジも出ていて、なかなかの演技が光る、というか妙なオーラをギラギラとテカらせてアメリカ人のゴルフ・コーチを演じています。
彼と不倫に走りかけているのがK・S・トーマス演じる主婦、その夫の牧師役がローワン・アトキンソン。
そこへ雇われて来る家政婦であり、実は誰かさんの実母でもある”mum”が、マギー・スミス。
話の筋は、大人のメリー・ポピンズ。鞄につまっているのは家具なんかではないけれど。シリアル・ママに対するイギリスの返答とも言えそう。
ブラック・コメディの中でも、軽妙でおすすめなのは”Waking Ned”。
「物語をこうやって解決しちゃっていいのか」という爽快なエンディング。
邦題は「ウェイクアップ!ネッド」。英語の読みをまるごと邦題にせず、日本人に通じやすいよう、良い感じに調整してあります。
変な調整は多々あれど、良い調整は珍しい。かけているかわかりませんが、”Wake” というとお通夜という意味もあり。
アメリカでのタイトルは”Waking Ned Devine”でやや長いフルネーム・バージョン。Devine は日本の姓にあてはめるならば、「神野」といったところ。
脚本・監督はカーク・ジョーンズ。「ナニー・マクフィー」「みんな元気」の監督です。
舞台はイギリスの片田舎。宝くじの当たり券をめぐって、さて善良な住民たちはうまく立ち回れるだろうか?というドタバタ劇。
アメリカのド田舎はチェーンソーもった狂人が潜んでいますが、イギリスの田舎では若者でも狂人でもなく、カツカツ年金生活の老人たちがちょこっと悪事を働く。
(ブラックではないけれど、”Saving Grace” も園芸好きな田舎の奥様が、亡き夫の残した借金を返すために温室で「葉っぱ」を育て始めて、という話。
タイトルは「グレースを救う」と「取り柄」の意。「やわらかい手」を思い出すけれど、方向性がコメディに寄りきっています。)
最後は”Wild Target”、邦題は「ターゲット」。
全体を通してエキセントリックに「なろうとしている」感が否めないのが、ちょっとおしい。演出がくどめ。
しかし、やっぱり最後にはちゃんと〆ているのです。