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赤いタッセルの話

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rtbox

 

こんにちは。Blog更新も、写真もさぼりがちで申し訳ないです。

特に写真は撮っていないうちに昔より下手になって、腹立たしい。自分が悪いのだけれど!

 

Perfume の新しい曲の衣装にタッセルがたくさん付いているよ、と知人が親切に教えてくれました。

これ、ね。チャイナ風の衣装にタッセルがたくさん。ということで、触発されて珍しく真面目にタッセルの話でも。

前の記事に「揺れてこそ、房」と書きましたが、タッセルを衣服やその装飾品に付ける場合、その目的は大きく分けて2つあります。

「飾る」ことが大前提。その上で、動きを強調する場合と、権威を強調する場合。

前者はダンサーを、後者は英国王室やバチカンなんかを見ているとわかりやすいですね。

両方の目的を兼ねることもあり、戦士・兵士の装いがこれにあたります。動きと権威、両方で相手を威嚇する。

武器自体にタッセルがついていることも多く、古今東西、刀には何かしらの房飾りがついているものです。

 

さて、ロンドン塔に「ビーフィーター」と呼ばれる衛兵隊がいます。

今ではもはや儀礼的な意味しか持ちませんが、彼らはハルバード(矛槍)と呼ばれる武器を持っており、

これには大きめのタッセルが貫通するような形で取り付けられています。

 

Yeomen of the Guard

Photo By Philip Allfrey, cc-by-sa-2.5

 

貫通しているという点ではやや珍しいですが、いかにも派手で、動きと権威の強調という点ではわかりやすい使い方だと思っていました。

ところがこのタッセル、今まで私が知り得た中では唯一つの、完璧に実用的なタッセルであり、まったくもって「飾り」ではなかったのです。

 

名ばかりのタッセルで実際は鞭だったり、構造的によく似ている「はたき」や、Horsehair tassel のようなものは除外して、

普段、タッセルはロープ部分が実用されることはあっても、房には装飾的な意味しかありません。

ゆえにタッセルは贅沢であり、特別。美しく、特権的な世界に属するもの。

だからこそ余計に、この例外が担った役割には驚かされます。

武器であること、その形状を考えると、勘の良い方はもうお気づきかもしれません。

ハルバードについているタッセルの本来の役割は、返り血をとめること。

槍に血が伝って持ち手の指がすべることのないように、血を吸収するようにつけられたのです。

中国武術で使われる「花槍」にも、もっと小さいながら房が付いており、まったく同様の目的だとか。

 

ドローンやマシンガン以前の時代の、古い話。今では、ビーフィーターの房は常に金色のようです。